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眼球運動をやってみて

私が牛乳パックから作られた指標プレートを使う「眼球運動」と出合ったのは、確か平成13年のことだったと思います。

網膜色素変性症の患者である私はそれまで視力、視野といった自らの視能力がどの程 度なのかということを、単なる数値でしか把握できていませんでした。実際にいろいろな場面で視野が狭く、視力が低いことによって「見えにくい」ということはわかっていても、それがどのくらい見えにくいのか、どうしたらその不自由さを少しでも克服できるのかという術は、それこそ眼中になかったのです。

「眼球運動」に出会って「なるほど!」と、えらく納得できたことは、指標となる牛 乳パックをじっと見つめる「固視」を行なった時に、「見えている文字」の面積、「見える文字」の大きさ、「見えやすい」文字」の色相が具現的に把握できたということからでした。 この重要な”気づき”は、「眼球運動」の基礎として、この訓練に連なるいろいろな 応用においてたいへん大事なこととなっていきます。

補助具としてルーペや拡大読書器を活用する際に、自分が「見えている面積」、「見 える文字」、「見やすい色相」を常に意識化できることにつながり、たいへん重要な 要素となるのです。

まずは牛乳パックなどいくつかの大きさの文字、字体が異なる文字、いくつかの色が 使われた平面の指標を片手で持ち、自分の見えている面積はどのくらいか、その中に はどのくらいの大きさの文字がいくつくらい見えるか、そして文字の色や字体はどん なものが見やすいか、バックと文字の色はどのような組み合わせだと見やすいか、と いったことを指標をジッと見つめながら把握(意識化)できるようにしていただきた いと思います。 くどいですが、この「固視」をしっかりと理解して意識化しながらできるようになる ことが、何よりも大事なワンステップとなります。

その次のステップは、指標に対して固視した部分をずっと固視した状態で、指標を左 右、上下と動かしていく訓練となります。

スピードは最初はかなりゆっくりで構いません。慣れていくに従い徐々にスピード も早めていけばよいと思います。

左右に動かす場合、左右どちらからでも構いませんが、右側に動かしていく場合は、 指標を右手で持って中心から右方向に水平に右耳の方へスライドさせていく感じで指 標を動かしていきます。この時の一番の注意点は固視している部分をずっと見詰めな がら動かしていくことと、指標は眼を動かすだけで頭や首は固定した状態で行なうこ とです。ちゃんと固視した部分を見詰め続けずに指標の他の部分や指標からはずれた 部分に目を動かしてはこの訓練の意味がなくなってしまいます。

ずっと右耳の方向に 指標を動かしていくと、やがて目だけを動かして見ることができる限界となります。 最初のうちはこの限界あたりまで近づくと、目が引きつるような感覚、目から自然に 涙が出てくるような辛さを感じると思います。でも、このあたりまで指標を固視しな がら持ってくることがポイントでもありますからがんばってやってみてください。そ して、もう一分張りです。この限界の位置で5秒から10秒程度固視を続けます。最 初のうちはかなりキツいと思いますが、左や上下についても同様の方法で、固視した 指標を動かしながらやってみてください。最初は1日5分程度でいいと思います。長 い時間やればいいというものではなく、とにかくリラックスしながらも集中して訓練 することが何よりも肝要だと思います。

今になってよく思うのですが、この訓練を始 める前は、ちゃんと見ているつもりでも、ちゃんとは見ていなかった、つまりは自分 の見えている部分がよくわからないのに、見ているようなつもりでいたということが よく理解できるようになりました。自分の見えている部分が把握でき、その見えてい る部分を目を上手に使いながらできるだけ慎重に捉える"癖付け"をすることの大切さ が訓練を続けることでより深く認識できるようになりました。

網膜色素変性症に拘わ らず目の疾患で、視力が低下し、視野もかなり狭くなっていろいろな場面で不自由さ を感じている方は結構たくさんおられると思いますが、その時その時の状態でできる 限り「見る」ということを大切に、この「眼球運動」を実践することによって、多く のロービジョンの皆さんが、自らのQOLを少しでも向上されていくことを心から望 みます。

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