スクリーンリーダーを職場で十分過ぎるほど活用している。けれど、自宅ではパソコンは使いたくない。イヤホーンを使って仕事をしている。電車の中で機械を通した音は聞こえるが、日常会話の低音領域が聞きにくくなっているとの報告を受けた。
 片耳にイヤホーンをして、もう一方を開放していると、職場での様々な音、例えば電話に出やすいということもあって、このような使い方をしている人も多いと思われる。
 日常的に電車やバスなどの公共交通機関の中で、ウオークマンに代表される音響機器をヘッドホーンを用いて活用している人も当たり前の風景として定着している。大きな音で長時間音を聴いていると難聴になる危険が高いとされている。眼も悪くなり、耳まで悪くなったらと不安になっている人も案外多いのではないだろうか?
 最近のオープン型(開放型)のヘッドフォーンの質は良くなっている。周りの音も聴きとれ、かつそれ相応の音で楽しめるものもある。耳をケアすることも、ちょっとしたヘッドフォーンを選択することで可能な時代なのだが、耳のケアを意外と見落としているのではないだろうか?音源の方向性を正確に定位するためには、左右の聞こえの差がないことが大切である。10デシベル以上の差があれば、音はずれる。正面に音があった場合、悪い方の耳には小さく聞こえるために、いい方の耳側にずれる傾向がある。歩行する上では、音が正確に捉えられることが大切な要件なのだが、イヤホーンをして聞こえが悪くなったとしたら、安全に歩く上で支障となる。
 話を聴きながら、保有感覚を最大限に活用するためには、その力を維持することをもう少し具体的に提示することが必要であると思った。聴覚、触覚、嗅覚など、それぞれの感覚の持つ力もその感覚器の持つ特徴を意識化することで、十分に様々なことを教えてくれる。聴覚は視覚に次いで情報量を与えてくれ、世界の実相をきちんと把握することが出来る。触覚は手や足の届く範囲のかなり制限された世界を、嗅覚は気化した匂い成分が届く範囲、味覚は口の中に入れた範囲内と狭くなる。
 一方で、身体的な順応ということを考えれば、ある刺激に対してより強い刺激に慣れるのが身体機能でもある。マックスウェーバーの法則と言うのだけれど、刺激に対して汎化しやすいことが特徴だ。
ここで言いたいことは、それぞれの感覚器官の持っている本来の状態を生かす上では、適正な刺激を与えることが必要で、強度な刺激や限定された使い方をすることは望ましいとは言えない。そのためにも普段から感覚を手入れすることだと思う。
 手入れするとは、例えば音の特性の理解があってなされるものだ。音の反射、屈折、通過等について、日常生活場面で照らし合わせて理解し、音が距離によってどのように減衰するのかを識った上で、場面場面で使い分けてみることにある。大きすぎる音には被曝しないようにする。そうしないと難聴という状態を生み出してしまう。
 道具は使うものであって、使われるものではない。そんなことを思った。