拡大・縮小読書器なるものを数年前に「ナイツ」という会社に創ってもらった。
世界同時不況によってナイツはロービジョンの分野から撤退し、とは言っても単眼鏡の供給は継続するとのことだが、CCTV(拡大読書器)は、長野のにしざわでんききき(どう表記するのかわからないので平仮名にしておきます)というメーカーに技術移転するそうです、時代の潮流を感じている。
 拡大読書器の据え置き型の中でXYテーブルを使用するものは、画面の見る位置を固定し、横書き、縦書きの際にネジのゆるめ方を考える必要がある。また、本人の姿勢や視野の位置によって、必ずしも正面に構える必要はない。
 視野が狭くてある程度視力のある人例えば0.2以上あると、文字を視野内に沢山入れたいために縮小を好む。けれども、実際としては、そのような道具がない。特に白黒反転した場合、フォントが崩れてしまう。なかなか難しいのである。
 考えてみると、少数意見というのはなかなか聞き入れられないのが現状である。光学的補助具では、15倍から22倍程度、しかも文字数にすると視野に1~2文字前後しか入らないものが多いのだけれども、拡大読書器なるものは50倍前後に拡大可能である。いままで、文字を読むことをあきらめていた人たちにとっては朗報と言えるが、街の中でこれを保障するにはとても難しい。表示自体を大きくし近づけば、網膜上に拡大されるが、なかなか近づいて見る勇気があるだろうか?
 もう10年以上にもなるだろう。グラスファイバールーペなるものが考案され手にしたときの驚きは今も鮮明に残っている。細くくびれている側を読みたい紙面に当てると、大きな面に2倍程度に文字が拡大される。多少暗くても、明るく映る。写り込みがないのに驚いた。逆さまにすると、細くくびれている面の中に、文字が縮小されて映る。これには改めて驚いたものだ。この原理をうまく活用すれば、かなりの視野狭窄のロービジョンにとって様々な場面で楽に活用できるのではと考えたが、なかなかこれ以上は進展しなかった。
 そんなおり、マイナスレンズを離して活用すれば視野内にかなりの情報が納められることに気が付いた。函館の夜景を見てもらって大いに感激してもらったことを今も鮮明に覚えている。
 話を元に戻すと、携帯型のCCTVがかなりの勢いで広がっている。これは、どちらかというと電子ルーペ的で、長時間の活用での疲労感は大きい。白黒反転できない制約が光学的な拡大鏡にはあるが、携帯型読書器はこの欠点を補って余りある。拡大鏡を長時間活用するのは相当に疲れるが、また、携帯型読書器の疲労感も同じである。
 そんなことを考えながら、本当に「見ることの」喜びを取り戻すための方策はどこにあるのか考えたいと思うのである。