4月23日、早朝祖母が96歳の人生の卒業式を終え旅立つた。大正2年に広島県に生まれ、日本の激動の時代を生き抜いてきたということになる。
 葬儀に京都に戻っていた際に、30代の盲ろうの方とお会いした。大学で事務を執っている、5年契約で勤めていて来年の6月で辞めなければならないこと、聴覚障害が先にあり、最近、視覚に障害が出て困っているとの話を聞いた。
 眼球運動(Eye movement)については、本で知っていたとのことで、実際に詳しく説明した。
 視野についても、距離との関わりや日常的な視点の置き方などをお話したが、そのこと自体を聴くのは初めてのことで驚かれていたようだった。
 側で聴いていた眼科医も改めて、視力もさることながら、視野の重要性に気が付いてくれたようだ。
 最近、電車の中で座れたときに、眼鏡をはずして、風景や人の顔などを観察することにしている。視力は左右とも0.06、視野自体は問題ないという条件の中での観察である。
 対面に座っている人の顔の造作は完全には理解できない。眉毛や鼻のあたりが曖昧ではあるが、男性か女性かはわかる。服装もコントラストがはっきりしていると、明確にわかるが、白とグレー等、判別しがたいものもある。
 隣に座っている人や、扉のあたりに立っている人達の動きもちゃんと追える。これは、視点を正面においていてもだ。視野の有効性については、これまでもお話してきたところだが、周辺視野を意識化することはとても重要である。
 祖母がその両の眼で見てきた風景は、一体どんなものだったのだろうか?喜怒哀楽を伴ったその人生の中で数々見てきただろう風景を想像し、見ることの意味を考えさせられている。