センターに初秋の頃から訓練に来ている50代の人に単眼鏡の導入を始めた。年末にカレンダー法による距離による視野に入る情報量の変化を意識化していくことを始めた人である。これまでロービジョンケアを色々と工夫してきたが、今回はこれまでと違ったやり方を一つ工夫してみた。
まず、裸眼の状態で、1m、2m、3m、5mのカレンダーの見え方を確認する。カレンダーの大きさは縦132.4cm、横106.2cm。1枚の大きさは縦33.1cm横35.4cmのものである。距離を伸ばして視野に入る情報量を意識してもらった。
1m離れて見える情報と2m離れて見える情報量の違いを意識する。数字や文字としての見やすさは1mのほうがはっきりわかるけれど情報は距離が倍になると倍以上違うことに気づいてもらう。3倍になると・・・・・。1mでカレンダー1枚、2mで4枚、3mでは9枚視野に入ることを確認した。この人の視野狭窄は半径10°以内である。
単眼鏡の扱いに興味を持ってもらうため、最初何も工夫しない4倍の単眼鏡をのぞいてみるように言うと、射出瞳(接眼レンズ側ののぞき窓)が透明なためどこを見てよいかわからない。そこで、黄色の丸いシールを貼り(のぞき窓の透明な部分は切り取る)、その円の内側をのぞくように言うとスムーズに絞り込める。
少し単眼鏡に慣れたところで、3m離れた位置でいくつかの倍率の単眼鏡を試してみる。4倍の単眼鏡ではカレンダー1枚分、6倍の単眼鏡ではカレンダー1枚の8/9程度、8倍の単眼鏡だと1枚の2/3程度の範囲しか見えないことを実感してもらった。つまり、距離が一定の場合、倍率が高くなれば低倍率のものより、はっきりと数字や文字は見えるが切り取る範囲が狭くなること、ちょっとのブレで見える範囲が動いてしまうことが理解できた。
まだまだ、説明が不十分なことに気づくとともに、提示の仕方によって、意識化の進み具合も違うことから当分様々なアイデアを試してみて、更に理解しやすい工夫に結び付けたいと思った。