京都では1月7日から非公開文化財の特別公開が始まっている。冬や春の時期に期間限定で、普段見ることのできない文化財を開放する。ここ数年機会があれば見に出かけている。8日の昼前にも妻と散歩がてら、禅寺である妙心寺の三門を見に出かけた。楼上への急な階段を登ると、そこに30畳を超える空間が広がっている。少し薄暗いため、観音菩薩だの、十六羅漢だのが安置されている壁側の、その仏像の眼が光っているのが目についた。さらに天井はもとより柱や壁に彩色されているのだが暗がりに入ってすぐは、暗順応がいま一つで彩色の鮮やかさにさほど驚かないでいた。頭の中では、コーラルシュの暗順応に関する曲線のことなんかがよぎっていた。
普段は板敷のままの空間に、この期間参拝する人のための畳が敷かれていて、そこに座り解説のボランティアのおばさんの説明を10分程度聞いた。一つ一つの解説のあと、懐中電灯のスポットで羅漢や天井の絵を照らす。最初は、その灯があってでよくわかったが、途中から順応したおかげで懐中電灯の灯りよりも自然光でよく見えるようになった。観音菩薩と脇侍の善財童子、なんとか長者の安置されている天井に書かれている飛龍は圧巻であった。そのあとだ。緑や赤、青などの彩色された柱や、天女・楽器などの色が実に鮮やかに感じられるようになった。ラフラ像のある柱の一部の文様が今さっき彩色を施したかのような鮮やかさであり驚いた。
考えてみれば、懐中電灯と単眼鏡を持参し暗がりの中で照らすことに対して、どこのお寺も禁止していない。むしろ、暗順応してもよく見えない環境の中で、しっかりとみることも出来る。かってそんなことで、ロービジョンの人たちでお寺巡りが好きな人たちにアドバイスしていた。今回の特別公開の場合について考えると遮光眼鏡を利用し人工的にに暗順応を促進させたうえで単眼鏡を用いると、二・三百年前の彩色された当時の寺院の極彩色の雰囲気が十分に感じ取られるように思うのである。
またひとつ、気づきを得られた半日だった。