日中、喫煙所で、なぜか蝉の話になった。ここ数日、日中でもツクツクボウシが鳴いているけど、明け方からニイニイゼミが鳴いていて、まだまだ暑いねぇということから、クマゼミを関東でもよく聴くけど、昔はなかったというたわいのない話である。リンゴの北限が上がっていることやミカンの産地が北上しつつあることなど話題が尽きなかった。
季節感と言うのは、音や匂いはもちろんのこと、視覚的な変化の中で感じることも多い。一番感じやすいのは、音かもしれないけれど、その土地土地の音風景が生態系の変化によって変わりつつあるのも事実なのかもしれない。
食卓にのる食材の変化も季節感に溢れている。その土地土地で採れる食材も随分違っている。九州で食べるウニはムラサキウニだし、北海道で食べるウニはバフンウニだ。ムラサキウニは繊細な感じがするし、バフンウニは、おおらかな味だ。牡蠣も南と北では、味の濃厚さが違っている。いずれにしても、その土地の地味を体現している。
仕事の終わりがけにある人から電話がかかってきた。内容は、20歳の青年で調理師をしているその人の、最近目が悪くなってきて、仕事を続けていくうえでどのような創意工夫をすればよいのかというもの。考えてみれば、男性で調理好きな人は多い。ある種こだわりを持って作っているが、料理のレシピも含め、おいしく作るためのノウハウはインターネット上に溢れるほど。加熱一つとっても様々な方法がある。自分や家族のために作るのと、不特定多数の人に提供するとのでは、味はもちろんのこと、視覚的な見せ方も含めて違いがある。器の選び方一つでも食欲の刺激は違うだろう。
その青年に週末に会うこととして、どのように調理師として生き残るかをともに考えることになった。かつて、九州で創作料理で成功した板前さんのことを思い出しながら、その青年に会うのを楽しみにしている。