実験のための31文字を作っている。直ぐにわかるものでも、わからないものでも困ってしまう。0.2秒提示して、最後に内容を聞くのだ。視野に制限のある人たちの見え方にポイントを置いている。31文字と言えば和歌の文字数である。到底和歌を詠むという芸当がないので、国文学を専攻している長男に依頼してみた。15程つくってもらった。その内の1つ。

 ゆふされはつき   夕(ゆふ)されば月
 あさかほひらく   朝顔ひらく
 あしたのいかき   朝(あした)の斎垣(いがき)
 いはきりとほす   岩(いは)切り通す(とほす)
 たきかはのみつ   滝川(たきがわ)の水

 推測読みが出来る場合、実際の見え方と違ってくる。余計なバイアスを取り除くために色々と考えてみるが、臨床家のぼくはついて行けない世界だ。当たり前に見えることや認知することを、エビデンスとしてとらえようとすると、丁寧に、ねばり強く考えることが先ずは一番大切なのだろうが、愚かで、怠け者で、相手に依存しやすいぼくは、なかなか出来ないのである。
 寝っ転がって、イメージし、気の向いたときにイメージしたものを形にすることは好きだし、その製作中には無我夢中になるのだけれど、それも一年の内の数日なのである。ではあと何をするのか。それは、訓練。一対一の訓練は最高だ。訓練にも間が大切で、お互いに息が合うとすばらしいものになる。それを追い続けているのが自分らしく生きることなんだろうなぁと、実験のための準備に気持ちを盛り上げようとしている一日だった。