40代の、手織りをする人から、依頼していた50枚のコースターが昨日届きました。5枚1組のコースターはそれぞれ一色で織られていますが、色合いや手触り感も申し分なく感じました。片眼に中心視野が5度程度、それに少し上方にわずかながら残っている視野と視力0.03程度だと記憶していますが、彼女の彩りに対する感性の良さに感動すら覚えたのです。
 私たちが、日常生活している世界は様々な色が溢れています。700万種類の色を人は見分けられると言います。様々な道具や建物、自然の様々な色彩。その中でコントラストを見いだし、それぞれの風合いを感じつつ、色を楽しんでいると言えるでしょう。
 くだんの彼女に、かって、カラーチャートを試作したことがあります。原色の並びや配置での工夫はさほど困難さを伴わなかったのですが、パステル調の同じ色調の配置には、手間取った思いがあります。彩度や明度の差から来る色合いの微妙な見え方を区別することは意外と難しいものだったように覚えています。色味をとらえるために、ルーペを用いたこともありますが、拡大読書器を上手く活用することで多くの色を的確に答えうることも思い出として残っています。
 コースターの1枚、1枚を手に取りながら眺めていますと、それぞれの色が実に繊細で且つ明瞭なことに気づき、単に色自体の問題ではないのだと改めて思いました。
 考えてみますと、パステル調や淡い色合いについて、彼女が苦手であることは疑いの余地はありません。しかし、その個性的な色を醸し出すように編み上げるのは、彼女の中にあるイメージが重要で、かつ、彼女が手にする糸のその風合いも含めた色や編み上げた後の光の当たり具合での見え方と密接に関連づけられるものがあるはずです。
 我々のイメージは、網膜に映る映像のみならず、視覚体験による模倣や学習が重要です。イメージの形成には、間違いなく視体験がその根底になっていると思います。いまは、糸を選ぶ段階で必ずしも我々が見ている色合いと違うかも知れませんが、今までの視覚体験によるイメージが豊かであろうことを感じました。