定点観測の仕方について書いた。その後、ある人から定点観測について問いをいただいた。「いまだに景色によって中心が見えている場合と、見えていない場合の違いがつかめていないからこういう時期でも定点観測は効果があるのだろうか」というものだ。視野の意識化では定点観測が必要で、その際具体的な視標が必要となる。先の問いをした人は、風景を基準にしようとしているため脳のFilling in(つじつま合わせ)のために違いが気づけないことを教えてくれる。と同時に視標の選択が大切になる。眼球運動訓練でも、定点観測でも視標は文字や記号、図形などが良い。特に文字の場合、あるべき位置に線が欠けていると気が付きやすいので視標としては最適である。けれども、視力の低下が著しい場合文字が使えない場合がある。その際には、定点観測が難しくなる場合もある。アムスラーチャート(白黒反転の格子縞上のもの)を加工したり、〇・△・□(●・▲・■)等で工夫して定点観測用に作る場合もある。あきらめてはいけない。
もう一度、定点観測のための具体的方法について書いてみる。定点観測では、同じ時間帯、同じ視標(カレンダー)、同じ方法・手順で淡々と取り組むことがコツである。調子のいい日と悪い日とか見やすい日と見えにくい日の違いを意識化してみるのも大切である。できれば、パソコンやICレコーダー等でメモとして残しておき、それぞれの共通事項を見出す工夫をすると意識にのぼりやすくなる。
一般の家庭なら3mぐらいの位置の確保はできるだろう。カレンダーを壁に貼り、1m、2m、3mの見え方を幾度となく体感するように努める。目線はそのまま維持することがここでのポイントとなる。まずはカレンダーの同じ位置を固視して距離を変えること、距離による眼筋の動かす量の大きさを意識すること、カレンダーの文字列を凝視しながら追視する等この定点観測を丁寧にすればするほど距離感がつかめるようになる。つまり眼を主体的に動かす際の距離との関係が見えてくれば日常生活の中で手前のものを見るほど、眼を大きく動かす必要がわかる。
定点観測で用いるカレンダー法は、見るたびに新しい発見があるだろう。それを毎日の生活の中の一部に取り入れて、更に意識化を進めていくと実際の場面でうまく眼を使えるようになる。