誰もいない職場。日常から非日常に変わる貴重な一瞬だ。人の容積もなく、ただがらんとした中で「シャカシャカ」とキーボードを叩く音やパソコンのビープ音、コピー機の「ウィーンッ」という待機音、「カチッカチッ」という時計の音など普段仕事中には気づかない音に包まれている。
 トイレにでも移動したのか、ゴミ箱を「コトン」と置くような音もかすかに聞こえる。事務所内は妙に明るいことに気づいた。節電、節電とつぶやきながら、蛍光管を次々に切って自分の周りだけを明るくした。
 目の前にあるディズニーのポスターがくすんで見える。青系が見づらい感じ。黄地に黒はかえって見にくく、寧ろ黒地に白は見やすいなあなんて、「フムフム」と確認してしまう。白地に黒は最悪かな。