窓を開け放つと涼しい風が「そよそよ」と室内に入ってきます。日中の蒸せるような、汗がじんわりとにじみ出てくる不快感から解放される一瞬です。
 そんな中である種の音や人の声に耳が傾むくと、グンと意識の上に立ち上ってきます。心理学で言うカクテルパーティ効果というものです。意識が向くというのは、対象に対して焦点するということです。日常生活の中では、注意を集中し持続させることは、ことのほか難しいのが現状で、エントロピーの第二法則のごとく、注意が散漫化する方向にあるかと思います。
 生活行動の場面では、注意をどう分散するか、むしろ分配できるかがとても大切です。言葉を換えると、活用すべき感覚をどのように選択していくのかが問われています。最初は意識して注意を向けなければならない。そのうち、その場面場面での注意の向け方のコツがつかめてきます。実際の生活では、ずっと注意を維持することはできませんから、所作を滞らずに流れるようにするためにも、適切な注意の向け方、分配が重要になってきます。
 さて、歩行訓練の中に、SD訓練というのがあります。スタート地点から目的地までの地図を頭の中に描きルートを選択して歩くわけです。目標になるものを定位し、その手がかりから自身の位置を割り出し、次に立ち現れてくる次の目標に向かって移動し・・・と言うのを繰り返しながら最終的に目標地点に行くわけです。
 同時に往路と復路は逆になりますので、地図を回転させるなど行うのですが、ここで、大切になってくるのが、注意の集中と分散なのです。
 私たちの日常生活では、注意が不足していることで、失敗したりすることも多くあります。その原因をたどると、「注意」のありようが問われていると思えてなりません。