今日16時過ぎに来客があった。9月から新任地へ赴く前に、中心暗点の、しばらくトレーニングした成果をみてほしいとのことであった。この人は医師であるが、自分自身が黄斑部の病気になったときに、同僚から「もう治らないから・・・」と冷たく言われ、ショックだったようだ。
 視野について丁寧に説明した。暗点の位置、それに対して暗点と距離との関係や、どういうトレーニングをすると見やすくなるのか等1時間半くらい、チャートや図を書きながら示した。日常生活では実験を数限りなくしているようだが、なかなか、保有している視野のどの部分を用いたら効率がよいのかが見いだしにくいようだ。
 視野の意識化ということを、さんざん言ってきているけれど、自分自身の感度の良い周辺視野を意識化することは意外に難しいことだと思う。一つには脳自体が、見えない、見えにくい視野の部分を補っているからである。補うと言っても、実体はないわけだから、本当はない。だから、とりあえずつじつま合わせをしているのだけれど・・・。
 一番に気づけるのは、アムスラーチャートを用いて、線のゆがみ等を意識してみることなのだが、東京LVSTの皆さんの中でも十分に提示していないかも知れない。見えている、それもクリアーに見えているという実感が伴っていてもきちんと評価すると、見えている部分の中にも様々なレベルがあるわけだ。
 ある種、トレーニングは自らを識ることに尽きると言っても過言ではない。「汝自身を知れ」と古のギリシャの哲人が名言を今に伝えているけれど、視野の意識化や自分自身の眼をうまく活用するには、まずは、あるがままの見え方を識ることに尽きると言える。
 さて、今日であった黄斑変性の男性は、右目の真ん中より右下に暗点がある。自分自身で日々実験する中で、その位置を使っていることを納得しつつも、上側や鼻側にもいい箇所があってどのように使えばいいのかがわかりにくいようだった。あせらず、実験する中で「わかることと」同時に保有している箇所を色々とわかるからこそ、もし緊急のことがあっても、その時点で活用できることがわかりますよとの説明に、納得していただいた。
 まだまだ、視野のことについて識らない人が多いなぁと感じた次第である。