保有視覚機能の活用の第一のポイントは、視野の意識化です。第二のポイントは、他の保有感覚の活用にあると思います。求心性狭窄の場合、周辺の視野が活用できないわけで、その際には、聴覚によるsaccadic eye movementを行う必要があります。そのためには、smooth pursuit eye movementがうまくできなければ、目標とする位置に眼を向けることができません。あるいは、一方の眼で視覚対象をとらえることができない場合は、距離感を把握するため、jump convergenceも必要となります。
これらの機能は、本来、我々が持っている力です。
では、他の感覚をうまく活用するにはどのようにすれば良いのかという問いかけが出てきます。我々が、聴覚や触覚、運動感覚をうまく活用するには、注意の集中と配分(選択的分散)をする必要があるようです。耳には耳の、手や足には、手や足の持っている力があります。しかし、視覚が多くの情報を瞬間的に把握するのに対して、これらの感覚は、繊細です。と言うことは、できるだけ視覚の束縛を解く必要が出てきます。
前回のテーマと重なり合うのですが、意識の沈黙が必要です。ここで言う意識の沈黙とは、外的な刺激に対して、静かに受け流していくような感覚です。
わかりやすく言うならば、音や、感触、温度などを、あれこれ思いめぐらさず、感じていくような感じです。視覚からの刺激を少なくするうえで、半眼にして、耳や感触に意識を向けていくことに尽きます。
感覚系を味わうには、やはり、視覚との絡みの中で、取り組む必要がありそうです。
たとえば、今日もとても暑い日ですが、汗の流れていくままに感じてみる。鳥の鳴き声に注目して、どれくらいの距離からどれだけの鳥が鳴いているのかなどを感じ取ることが、これらの感覚を鍛えていくうえで、大切なものでしょう。
感覚器は、感じようとすればするほど、少しずつですが開いていくのです。そのためにも、意識の沈黙を大切にしたいものです。

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