雨音を聴きながら、布団の中でモサモサしていた。夜明け前の一時である。
子どもの頃の雨降りの日には楽しい思い出と、真逆な嫌な思いがあった。楽しい思い出とは、町並みがしっとりとした、肌にも湿り気を感じる質感が心地よいと思えることで、嫌な思いとは、車のシャーッというノイズとその後、水や泥をはねて通り過ぎるその威圧的な雰囲気がどうにも馴染めなかったからだ。
木の葉や枝に雨が水滴となって今にも地面に落ちそうなその時の、水の中に浮かぶ風景はとても美しい。と同時にはかなさをともなっているのもいい。
逆さまに映る風景も、その小さな雨滴の中に忠実に再現されている風景も、雨滴のふくらみの中でデフォルメされている形も、それぞれが面白く感じられ、時を忘れて見つめていた。
布団の中でそんなイメージをふくらませつつ、今日はどんな風にそれらを体験するのかな等と考えていた。